MOTUの「青い画面」が象徴するもの
MOTUのオーディオインターフェイスには2つの世代がある。入門向けのMシリーズ(M2/M4/M6)はシンプルな黒いデザイン。そしてもう一つの系譜が、本体前面に青い液晶ディスプレイを搭載したプロ機種群だ。
この青い液晶シリーズが意味するのは単なる見た目の違いではない。これらの機種はすべて以下の共通機能を持つ:
- AVBネットワーク対応:Ethernetケーブルで複数機器をネットワーク接続し、大規模オーディオシステムを構築できる
- スタンドアローン動作:PCなしで単体起動・ルーティング設定の保持が可能
- CueMix FX内蔵:本体だけでモニターMIXを完結させるDSPミキサー搭載
- 192kHz対応(一部機種):ハイレゾリューション録音に対応
宅録向けのMシリーズと異なり、これらはスタジオ・ライブ・放送・インスタレーションなど、より本格的な現場での使用を前提に設計されている。
機種カタログ:役割別に整理する
MOTUの青い液晶系プロ機種は、役割によって4つのカテゴリに分類できる。
カテゴリ1:汎用型(入力も出力も揃っている)
スタジオの中核機として、録音・モニタリング・出力をすべてこなす機種。
UltraLite AVB
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 10ch(XLR×2 + TRS×8) |
| アナログ出力 | 14ch(TRS×6 + ヘッドフォン×2) |
| 合計I/O | 18in / 22out(ADAT・S/PDIF含む) |
| 接続 | USB / AVB Ethernet |
| スタンドアローン | ✅ 対応 |
| サイズ | ハーフラック(1U) |
UltraLite AVBはMOTUプロ機のなかで最もバランスの取れた汎用機だ。ハーフラックサイズながら18in/22outという充実したI/Oを持ち、スタジオ固定でも現場持ち出しでも使える。スタンドアローン動作とCueMix FX内蔵により、PCなしでライブのモニターシステムとして単体運用できる点が大きな強みだ。
こんな人に: 小〜中規模スタジオのメイン機、ライブ現場への持ち出し兼用
1248(フラッグシップ)
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 12ch |
| アナログ出力 | 16ch |
| 合計I/O | 最大48ch(AVB含む) |
| 接続 | Thunderbolt / AVB Ethernet |
| DSP | CueMix FX(EQ・コンプ・リバーブ内蔵) |
| スタンドアローン | ✅ 対応 |
1248はMOTU AVBラインナップのフラッグシップ。Thunderbolt接続で最小レイテンシーを実現しつつ、AVBネットワークで複数台を統合したシステム全体の核になる。内蔵DSPのCueMix FXはハードウェア処理のためDAWに負荷をかけず、大規模セッションでも安定して動作する。
こんな人に: プロスタジオのメイン機、大型AVBシステムの中枢
896mk3 Hybrid / UltraLite mk3 Hybrid
これらは前世代(FireWire/USB ハイブリッド)の機種で、現在は後継機(UltraLite AVB・828)に置き換わっている。中古市場では流通しているが、AVB非対応のため大規模拡張には使えない。現行購入を検討するならUltraLite AVBまたは828を選ぶべきだ。
カテゴリ2:入力特化型
マイクプリアンプとADコンバーターに特化した機種。単体では出力が限られるが、メインI/Fに接続して入力chを拡張する用途に使う。
8M(8chマイクプリ + AVB)
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| マイクプリアンプ | 8ch(XLR) |
| ADコンバーター | 8ch、192kHz対応 |
| 接続 | AVB Ethernet / ADAT光 |
| アナログ出力 | なし(モニター出力のみ) |
8MはマイクプリとADコンバーターに特化した拡張モジュールだ。ADAT出力でメインI/Fに接続するか、AVBネットワーク経由で信号を送る。単体でDAW録音はできないが、メイン機(UltraLite AVB・1248など)と組み合わせることで入力を8ch追加できる。
典型的な使い方: 1248 + 8M = 20ch同時録音(バンド一発録り対応)
8Pre USB
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| マイクプリアンプ | 8ch |
| 接続 | USB / ADAT光 |
| 単体USB動作 | ✅ 可能(I/Fとして単体使用可) |
8Pre USBはUSB接続で単体I/Fとして使えるコスパの高い8chプリアンプ。8MのAVB版と違い、USB一本でDAWに繋がる手軽さが特徴。ハイエンドAVBシステムを組まない場合はこちらが現実的な選択肢だ。
こんな人に: 既存I/FにADAT経由で8ch追加したい、予算を抑えたい
24Ai(24ch アナログ入力専用)
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 24ch(TRS) |
| 接続 | AVB Ethernet |
| 用途 | 外部プリアンプ・コンソールからのステージボックス入力 |
24Aiは純粋な24chアナログ入力専用モジュール。アナログ出力は持たず、収録専用の入力拡張機として機能する。PAシステムのダイレクトアウトをすべて取り込んでライブ録音するシナリオが典型的な使い方だ。
典型的な構成: PAミキサーのグループ送り24ch → 24Ai → AVB → 1248 → DAW
カテゴリ3:出力特化型
DA変換と出力ch数に特化した機種。既存の録音システムにモニターやスピーカーの出力を増設する用途。
24Ao(24ch アナログ出力専用)
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ出力 | 24ch(TRS) |
| 接続 | AVB Ethernet |
| 用途 | マルチスピーカー再生、ヘッドフォンアンプ送り、サラウンド |
24Aoは24ch出力に特化したDAコンバーター。AVBネットワーク経由でDAWの信号を受け取り、24系統のアナログ出力に変換する。サラウンドシステム(7.1ch / Dolby Atmos)、マルチスピーカーインスタレーション、ライブ会場の複数ゾーンPA送りなど、「たくさんの出力先が必要」な場面で真価を発揮する。
典型的な構成例:
- Dolby Atmos 7.1.4(12スピーカー)再生システム
- ライブ会場:メインPA + モニター + サイドフィル + サブウーファー個別制御
- スタジオ:複数のヘッドフォンアンプへのキューMIX送り(12系統)
624(6in / 24out、ESS DAC搭載)
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 6ch |
| アナログ出力 | 24ch(ESS Sabre32 DAC) |
| 接続 | AVB Ethernet |
| 音質 | ESS Sabre32 Ultra DAC — DACとして最高水準 |
624は24Aoの上位版ともいえる機種で、ESS Sabre32 Ultra DACを搭載し、DA変換の音質が際立って高い。マスタリングスタジオのモニター制御や、ハイエンドな音質が求められるインスタレーションに使われる。
8A(8ch DA専用)
8chのアナログ出力専用モジュール。AVBネットワーク経由の信号を受け取り、8chのパワーアンプ・スピーカーシステムに送る。624・24Aoの小規模版として、小さいAVBシステムの出力段に使う。
カテゴリ4:ルーティング・モニタリング特化型
Monitor8(8系統モニタースイッチャー)
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| 入力系統 | 8系統(ステレオ) |
| 出力先 | 複数のスピーカーシステムに切り替え出力 |
| 接続 | AVB Ethernet |
| 用途 | マスタリングルームのスピーカー切り替え、コントロールルーム管理 |
Monitor8はモニタースピーカーの切り替えに特化した機種。マスタリングエンジニアが複数のリファレンススピーカー(NS-10・Auratone・メインモニター等)をワンタッチで切り替えながら音質チェックするシナリオが典型的な使い方だ。
用途別:どの機種を選ぶか
ケース①:宅録・ホームスタジオ(プロ品質を求める)
推奨:UltraLite mk5(現行)または UltraLite AVB
UltraLite AVBは18in/22outと豊富なI/Oを持ちながら、ハーフラックで設置場所を取らない。自宅スタジオでDAW録音し、外でライブも行う兼用用途に最適だ。
ケース②:バンドスタジオ(ドラム含む同時多ch録音)
推奨:1248 または 848 + 8M
| 構成 | 最大ch数 | 予算目安 |
|---|---|---|
| 848 + 8Pre USB | 16ch | 中級 |
| UltraLite AVB + 8M | 18ch | 中〜上級 |
| 1248 + 8M | 20ch+ | 上級 |
| 1248 + 24Ai | 36ch | プロ |
ケース③:ライブ録音・マルチトラックキャプチャー
推奨:UltraLite AVB(スタンドアローン)または 1248
スタンドアローン動作があれば、ライブ会場にPCを持ち込まずI/F単体でルーティングを設定し、後からPCで収録データを取り込む運用ができる。MOTUはこの運用が業界で最も信頼されているブランドのひとつだ。
ケース④:サラウンド・Atmos制作
推奨:1248 + 24Ao または 624
Dolby Atmos制作では12〜16のスピーカーへの個別出力が必要になる。24Aoの24ch出力は現場で使い切れるだけのchがあり、1248と組み合わせると入力はDAW側・出力は24Aoに分離した明快なシステムが組める。音質にこだわるなら624のESS DACが選択肢になる。
ケース⑤:マスタリングスタジオ
推奨:Monitor8 + 624
複数リファレンスモニター切り替えにMonitor8、DA変換の高音質化に624。この組み合わせがMOTUの提唱するマスタリングルームの標準構成だ。
AVBネットワークで組むシステムの全体像
AVBの真の強みは「複数のMOTU機器をEthernetで繋いで一つの大きなオーディオシステムを作れる」点にある。
[ステージ] [コントロールルーム]
マイク → 24Ai ──AVB──→ 1248 → DAW(録音・再生)
↓
24Ao → スピーカー16系統
Monitor8 → モニター切り替え
このシステムでは:
- ステージとコントロールルームの間はEthernetケーブル1本
- チャンネル数の増減はネットワーク上のルーティング設定変更で対応
- 機器の追加がプラグ&プレイに近い感覚で実現
同等のシステムをProToolsや他社機材で組むと、高価なMADI機器や専用ケーブルが必要になる。MOTUのAVBは標準Ethernetで動作する分、構築コストが大幅に下がる。
まとめ:青い液晶系MOTUの選び方チャート
| やりたいこと | まず見るべき機種 |
|---|---|
| スタジオ中核機(汎用) | UltraLite AVB / 1248 |
| 入力ch拡張(マイクプリ追加) | 8Pre USB / 8M |
| 大量入力(PAキャプチャー等) | 24Ai |
| 大量出力(サラウンド・マルチSP) | 24Ao / 624 |
| モニター切り替え(マスタリング) | Monitor8 |
| ライブ兼用・持ち出し | UltraLite AVB(スタンドアローン) |
| フラッグシップ・大規模システム中枢 | 1248 |
MOTUの青い液晶機は単体スペックよりも「どう組み合わせるか」で真価が決まる。自分のシステムの中で「入力」「出力」「ルーティング」のどこが足りないかを明確にしてから機種を選ぼう。
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