PreSonusとMOTU、何が違うのか
オーディオインターフェイスを選ぶとき、「どのブランドを選べばいいか」で迷う人は多い。その中でもとくに比較に挙がるのがPreSonusとMOTUだ。
どちらも音楽制作の現場で長年使われてきた老舗ブランドで、2チャンネルの入門機から業務用マルチchシステムまで幅広いラインナップを持つ。しかし設計思想と得意分野には明確な違いがある。
- PreSonus:DAW(Studio One)との統合を重視。コスパが高く、StudioLiveミキサーとのエコシステムが強力
- MOTU:ドライバー安定性と低レイテンシーに定評。AVBネットワーク対応で大規模システムに強い
この記事では両ブランドの現行ラインナップを全機種価格付きで比較し、用途別の選び方と組み合わせ例を解説する。
PCとの接続方式を先に理解する
オーディオインターフェイスを選ぶうえで、PCとの接続方式は最初に確認すべき要件だ。接続方式によってレイテンシーと帯域幅が決まり、同時録音できる最大ch数も変わる。
| 接続方式 | 最大帯域幅 | レイテンシー | 主な対応機種 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| USB-C(USB 3.0) | 5Gbps | 数ms | M2/M4/M6/848/10pre, Studio 24c/QHD 8 | 最も汎用的。WindowsもMacも対応 |
| Thunderbolt 3/4 | 40Gbps | 1ms以下 | Quantum 2626, MOTU 828(一部) | Macに最適。Windows PCはTBポート要確認 |
| AVB Ethernet | 1Gbps | 約1ms(ネットワーク経由) | UltraLite mk5, 828, 16A, UltraLite AVB | 複数台をネットワーク接続して大規模システム構築可能 |
Thunderbolt vs USB:何が変わるか
USB-C(USB 3.0)で通常の宅録・8〜16ch録音は問題なくこなせる。Thunderboltが必要になるのは以下の場面だ:
- 32ch以上の同時録音(大型セッション)
- DAWバッファを最小にしてソフトウェアモニタリング(1ms以下のレイテンシーが必要な場合)
- 複数のI/Fをひとつのシステムに統合する場合
予算を抑えるならUSB-C機種から始めて問題ない。MacでThunderboltを使いたい場合は Quantum 2626 や MOTU 828 が選択肢になる。
AVBネットワークとは
MOTUが強力に推し進めているAVB(Audio Video Bridging)は、標準的なEthernetケーブルでオーディオ信号を高品質・低レイテンシーで伝送する規格だ。
複数のMOTU機器をネットワークスイッチに接続し、大規模スタジオの分散録音・配線の簡素化が実現できる。ライブ会場の音響システムにも使われる。
多出力チャンネルの活かし方
多ch機種を選んでも、出力chを使いこなせないと宝の持ち腐れになる。以下の用途に当てはめて選定しよう。
①マルチモニタリング(ヘッドフォン複数系統)
スタジオでバンド録音をする際、ドラマー・ギタリスト・ボーカルそれぞれに異なるモニターMIXを返す「キューミックス」が必要になる。
| 出力構成の例 | 機材 |
|---|---|
| モニタースピーカーOut × 1 + ヘッドフォンOut × 3 | MOTU 10pre(10ch out)が4系統に分配可能 |
| 個別ヘッドフォンアンプへの送り出し | PreSonus Quantum 2626の多出力で対応 |
②サラウンド・マルチスピーカー再生
5.1ch・7.1ch・Dolby Atmos制作では複数のスピーカーへ同時に信号を出力する必要がある。通常の2ch I/Fでは不可能で、6ch以上の出力を持つ機種が必須。
| 出力ch数 | 対応フォーマット |
|---|---|
| 6ch出力 | 5.1chサラウンド |
| 8ch出力 | 7.1chサラウンド |
| 12ch以上 | Dolby Atmos(床スピーカー含む) |
③外部エフェクターへのセンド/リターン
外部ハードウェアコンプ・EQ・アウトボードをDAWに組み込む際、I/Fの追加出力をセンド、追加入力をリターンとして使う。8ch出力があれば4系統のハードウェアインサートが構成できる。
④ライブPAへのマルチトラック送り
ライブ会場でDAWから直接PAミキサーへ複数のch送りをする場合、I/Fの多出力が直接使える。10pre/848/Quantum 2626などの機種は本番環境にそのまま持ち込める。
PreSonus 現行ラインナップ一覧
Studio 24c — 入門・宅録の定番
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 2ch(XLR/TRS コンボ) |
| アナログ出力 | 2ch |
| 接続 | USB-C |
| サンプリングレート | 最大192kHz |
| 価格 | 約¥16,000 |
| こんな人に | ボーカル・ギター1本の宅録、ポッドキャスト |
Studio 24cはStudio Oneとの親和性が高く、バンドル版のStudio One Artistで即日レコーディングを始められる。XMAX-Lマイクプリアンプはこの価格帯では優秀で、コンデンサーマイクも十分に駆動できる。
Quantum HD 8 / Quantum ES ULTIMATE — 8ch本格機
| 機種 | アナログ入力 | ADAT | 接続 | 価格 |
|---|---|---|---|---|
| Quantum HD 8 | 8ch | なし | USB-C | 約¥145,000 |
| Quantum ES ULTIMATE | 8ch | あり(光×2) | USB-C/Thunderbolt | 約¥56,800 |
Quantum HD 8はドラム録音や小規模バンドの同時8ch録音に対応。同価格のQuantum ES ULTIMATEはADAT入出力を備えており、外部プリアンプを追加すれば最大24chまで拡張できる。どちらも超低レイテンシー(1ms以下)のThunderbolt動作に対応。
Quantum 2626 — スタジオ向けフラッグシップ
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 26ch(XLR×8 + ADAT×2 + S/PDIF) |
| アナログ出力 | 26ch |
| 接続 | Thunderbolt 3 |
| 価格 | 約¥105,000 |
| こんな人に | バンド一発録り、ドラムフルマイキング、セミプロスタジオ |
Quantum 2626は8chのXLRアナログ入力に加え、ADAT光端子2系統で最大16chの外部プリアンプ入力を受け付ける。ドラム全パーツ(バスドラ×1、スネア×2、タム×4、シンバル×4 = 11本)にギター・ベース・ボーカルを加えた14〜16chのバンド一発録りが現実的に構成できる。
MOTU 現行ラインナップ一覧
M2 / M4 / M6 — Mシリーズ(入門〜中級)
| 機種 | アナログ入力 | 接続 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| M2 | 2ch | USB-C | 約¥36,000 | 高音質・VUメーター搭載 |
| M4 | 4ch | USB-C | 約¥48,000 | ギター+ボーカル同時収録に最適 |
| M6 | 6ch | USB-C | 約¥80,000 | ドラム2点どり+ギター+ボーカル |
MOTUのMシリーズは「低価格・高音質・ドライバー安定」という三拍子が揃った入門機として高い評価を得ている。とくにM2はFocusrite Scarlett 2i2と並ぶ「入門I/Fの決定版」として世界中のスタジオで使われている。192kHz対応のDACは同価格帯で最高水準の音質を誇る。
848 / 10pre / 16A — 中〜大規模録音向け
| 機種 | アナログ入力 | ADAT | 接続 | 価格 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| 848 | 8ch | あり(光×2) | USB-C | 約¥298,000 | 8chアナログ+ADAT拡張 |
| 10pre | 10ch | あり(光×2) | USB-C | 約¥278,000 | 10ch同時録音。ドラム全収録対応 |
| 16A | 16ch ADAT | ADAT×2 | USB/AVB | 約¥275,000 | 16ch ADAT I/O専用拡張機 |
MOTU 10preはアナログ10chとADAT2系統を組み合わせることで最大26ch同時録音が可能。MOTU 16AはADATのみの入出力モジュールで、既存のI/Fと組み合わせてシステムを拡張する用途に特化している。
UltraLite mk5 — ハーフラック・モバイル高音質機
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 10ch(XLR×2 + TRS×8) |
| アナログ出力 | 12ch |
| 接続 | USB / AVB Ethernet |
| スタンドアローン動作 | 対応(PCなしで動作) |
| 価格 | 約¥121,000 |
UltraLite mk5はハーフラックサイズながら、スタンドアローン動作とAVBネットワーク対応を備えた本格機。ライブ現場へ持ち出してそのまま使える機動性が強みで、スタジオとライブを行き来するエンジニアに人気が高い。
MOTU 828 — プロフェッショナル統合機
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| アナログ入力 | 8ch XLR(マイクプリ内蔵) |
| 合計入力 | 最大28ch(ADAT×2 + S/PDIF含む) |
| 接続 | USB / Thunderbolt / AVB |
| スタンドアローン動作 | 対応 |
| 価格 | 約¥221,000 |
MOTU 828はMOTUの現行フラッグシップ。USB・Thunderbolt・AVBの3系統接続に対応し、スタンドアローン動作も可能。バンドル付属のDAW「Digital Performer」との親和性が非常に高く、プロフェッショナル環境の中核機として使われる。
ブランド横断 全機種比較表
用途別おすすめシナリオ
シナリオ①:ボーカル宅録・ポッドキャスト(予算〜¥15,000)
おすすめ:MOTU M2 または PreSonus Studio 24c
どちらも同価格帯で2ch入力。DAWとの親和性を重視するならStudio 24c(Studio One付属)、ドライバー安定性と音質を優先するならMOTU M2。実際の音質差はほぼないため、使用DAWで選んで問題ない。
シナリオ②:宅録バンド・弾き語り配信(予算〜¥25,000)
おすすめ:MOTU M4(4ch)または MOTU M6(6ch)
ギター直録音とボーカルを同時収録したい場合はM4で十分。ドラム練習動画の配信でスネア・バスドラ・オーバーヘッド2本の合計4本どりをするならM6が最適。
シナリオ③:ドラムフルマイキング(予算〜¥60,000)
おすすめ:Focusrite Scarlett 16i16(約¥47,000)または PreSonus Quantum ES ULTIMATE(約¥56,800)
ドラムのフルマイキングには最低8chが必要。Scarlett 16i16は8ch+ADAT対応で最もコスパが高く、Focusriteのプリアンプ品質も評価が高い。ADAT拡張で将来24chまで増設できるならQuantum ES ULTIMATE。なお、MOTU 848・10preはプロ向け高機能機で¥278,000〜¥298,000の価格帯になる。
シナリオ④:バンド一発録り・プロシステム(予算¥100,000以上)
おすすめ:MOTU 848 + MOTU 16A の組み合わせ
| 機材 | 役割 | ch数 | 価格 |
|---|---|---|---|
| MOTU 848 | メインI/F(ドラム8ch) | 8ch | ¥298,000 |
| MOTU 16A | ADAT拡張(ギター/ベース/ボーカル8ch) | +16ch | ¥276,000 |
合計約¥574,000で最大24ch同時録音システムが構成できる。ギター×2・ベース・ボーカル2人・ドラム8本マイクを同時収録するバンド一発録りが現実的な予算で実現する。
シナリオ⑤:セミプロスタジオ構築(予算¥105,000〜)
おすすめ:PreSonus Quantum 2626 + Studio One
Quantum 2626はThunderbolt 3接続で超低レイテンシーを実現(約¥105,000)。Studio OneとのStudioLiveエコシステムにより、マルチトラック録音・モニタリング・MIXまでシームレスに管理できる。26ch入出力は小規模スタジオの中核機として十分なスペックだ。
PreSonus vs MOTU:どちらを選ぶか
| PreSonus | MOTU | |
|---|---|---|
| 強み | Studio Oneとの統合・コスパ・StudioLiveエコシステム | ドライバー安定性・AVBネットワーク・スタンドアローン動作 |
| DAW親和性 | Studio One(バンドル) | Digital Performer(バンドル) |
| 拡張性 | StudioLiveミキサーとのAVB連携 | AVBネットワークで大規模システム構築可 |
| モバイル用途 | △(主にスタジオ固定向け) | ◎(UltraLite mk5はスタンドアローン対応) |
| コスパ | ◎(入門〜中級帯が優秀) | ◎(M2/M4は最強クラス) |
| こんな人に | Studio Oneユーザー・StudioLiveと組み合わせたい人 | 安定性最優先・ライブ兼用・AVBシステムを組みたい人 |
入門機(2ch・¥16,000〜¥36,000前後)ではMOTU M2 vs PreSonus Studio 24cがほぼ同スペックで拮抗しており、DAWの好みで選べばよい。中〜大規模(8ch以上)になると、Studio OneユーザーはPreSonus Quantum系、安定性とライブ兼用を求めるならMOTUという棲み分けが明確になる。
まとめ
| 予算 | 用途 | おすすめ |
|---|---|---|
| 〜¥40,000 | ボーカル/ギター1本 | MOTU M2 or PreSonus Studio 24c |
| 〜¥80,000 | 弾き語り/小規模バンド | MOTU M4 / M6 |
| 〜¥60,000 | ドラムフルマイキング | Focusrite Scarlett 16i16 / PreSonus QES ULTIMATE |
| 〜¥110,000 | セミプロスタジオ・大規模録音 | PreSonus Quantum 2626 |
| ¥120,000〜 | スタジオ兼ライブ用 | MOTU UltraLite mk5 |
| ¥221,000〜 | プロスタジオ・AVBシステム | MOTU 828 |
| ¥278,000〜 | プロ機・大規模拡張 | MOTU 10pre / MOTU 848 |
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