「演奏した楽曲」を売るとき、何にお金がかかるのか

著作権対象:楽曲そのもの(メロディ・歌詞)保有:作曲家・作詞家(JASRAC等が管理代行)→ カバーする側が 使用料を払う相手著作隣接権対象:演奏・実演そのもの保有:実演家(演奏者自身)録音物(原盤)は録音者・レーベルが保有→ カバー演奏する側に 新たに発生する権利利用形態ごとの使用料録音(CD/USB化)配信(ネット配信)演奏(ライブ会場)録画(DVD・動画配信)→ それぞれ許諾・料率が 別に設定されている
図:演奏楽曲を販売する際に関わる3つの権利。「誰の何に払うか」はこの整理から考える

自分たちで演奏した楽曲を販売する——カバーバンドのCD頒布、ライブ音源の配信、弾き語りのネット配信など、活動の幅が広がるほど「これって著作権的に大丈夫?」という疑問にぶつかります。

結論から言うと、自作曲でない限り、演奏・録音・配信のどこかで必ず原曲の著作権者への使用料支払いが発生します。ポイントは「誰の作品に」「何に対して」「誰が」「どう手続きするか」を形態別に分けて理解することです。この記事では依頼の多い6つの販売形態別に整理します。


大前提:3つの権利と支払い先

権利 対象 保有者 カバー演奏時の関係
著作権(演奏権・複製権・公衆送信権等) 楽曲そのもの(メロディ・歌詞) 作曲家・作詞家(多くはJASRAC/NexToneに管理委託) カバーする側が使用料を支払う相手
著作隣接権 演奏・実演そのもの 実演家(演奏者自身) カバー演奏することで自分たちに新たに発生する権利
原盤権 録音物(マスター音源) 録音した人・レーベル 自分たちで録音すれば自分たちが保有

つまりカバー演奏を販売する場合、「原曲の著作権者への使用料支払い」が必須で、そのうえで「自分たちが演奏・録音した音源・映像」には自分たちの著作隣接権・原盤権が発生します。誰の作品か=原曲の作曲家・作詞家(管理団体経由)、誰が払うか=演奏・録音・配信を実行するあなた自身、というのが基本構造です。


形態別ガイド①:演奏した作品の販売

1-1. ネット配信で販売する楽曲(カバー曲をSpotify/Apple Music等へ)

項目 内容
何に対して払うか 録音使用料(レコード製作)+ 配信使用料(インタラクティブ配信)
誰に払うか JASRAC/NexTone(原曲が管理楽曲の場合)
誰が払うか 配信するバンド・アーティスト本人(または配信代行サービスが代理徴収)
手続き方法 TuneCore Japan・Believe・DistroKid等の配信代行サービスでカバー曲登録 → サービス側がJASRAC/NexToneへの許諾番号取得・使用料精算を代行するのが一般的

注意: YouTube・TikTokへの「弾いてみた」投稿は各プラットフォームの包括契約でカバーされていますが、Spotify等のサブスク配信は包括契約の対象外です。配信代行サービスを使わず自分で配信しようとすると、個別にJASRAC/NexToneへ録音・配信許諾を申請する必要があり、実務上のハードルが高くなります。

1-2. CD/USBを作成して販売する楽曲

項目 内容
何に対して払うか 録音使用料(複製権使用料)
誰に払うか JASRAC/NexTone
誰が払うか 制作・頒布するバンド本人
手続き方法 JASRACの「録音等の許諾」窓口へ申請(部数・単価に応じた使用料規定あり)。プレス会社によっては申請代行に対応している場合もあるため要確認

注意: 「同人即売会・ライブ物販での少量頒布だから申請不要」という認識は誤りです。非商用・少部数であっても複製権の対象であり、原則として使用料の申告義務があります。


形態別ガイド②:ライブでの演奏作品の販売

2-1. CD/USB媒体での販売(ライブ音源の物理媒体化)

ライブ会場での演奏そのものには「演奏権使用料」が発生しますが、これは通常会場・主催者側がJASRACと包括契約を結んでいるケースが大半です。一方、そのライブ音源を録音してCD/USBとして販売する場合は、①-2と同様に別途「録音使用料」の申請が必要になります。演奏権使用料と録音使用料は別物である点に注意してください。

2-2. ネット配信での販売(ライブ音源のストリーミング配信)

①-1と同じ枠組みです。ライブでの一発録りであっても「配信のための録音・配信使用料」が発生するため、配信代行サービス経由での許諾取得が現実的な選択肢になります。

2-3. ライブ動画のDVD販売

項目 内容
何に対して払うか 録音使用料に加えて録画(映像)の使用料
誰に払うか JASRAC/NexTone(映像化は音源のみの利用と扱いが異なる点に注意)
誰が払うか DVD制作・販売元
手続き方法 JASRACの「録音・録画等の許諾」窓口で映像パッケージ用の許諾申請。プレス会社経由で対応してくれる業者もある

注意: 「CD化の許諾は取った」からといって、同じ楽曲を映像付きDVDとして販売する場合は許諾が別途必要です。音源のみの利用と映像化は許諾区分が異なります。

2-4. ライブ動画のネット配信での販売

項目 内容
何に対して払うか 映像配信のための使用料
誰に払うか JASRAC/NexTone
誰が払うか 配信するバンド・配信プラットフォーム運営者
手続き方法 有料チケット制のライブ配信サービス(ZAIKO・Streaming+等)を使う場合、サービス側が許諾取得に対応しているケースが多い。自主配信の場合は個別申請が必要

注意: 無料のYouTubeライブ配信は包括契約の範囲内で収益化まで可能なことが多い一方、有料チケット制・アーカイブ販売型の配信は包括契約の対象外になりやすく、個別の許諾確認が必須です。


手続きの流れを一枚で整理する

カバー楽曲を販売するまでの実務フロー① 楽曲・管理団体を確認JASRAC/NexTone作品データベースで検索② 利用形態を決めるCD化・配信・映像化のどれに該当するか③ 窓口へ申請配信代行サービス orJASRAC/NexTone直接④ 使用料支払い・許諾番号取得許諾後に販売・配信を開始できる
図:カバー楽曲を販売する際の基本的な申請フロー(形態によって窓口が異なる)
ステップ やること 主な窓口
1 原曲がJASRAC/NexToneの管理楽曲か確認 各団体の作品データベース検索
2 販売形態を確定する(CD/配信/映像)
3 許諾申請を行う 配信代行サービス(TuneCore Japan等)またはJASRAC/NexTone窓口
4 使用料を支払い、許諾番号を取得してから販売開始

誤解しやすいポイントまとめ

よくある誤解 実際のルール
「YouTubeで収益化できているから他でも自由に売れる」 プラットフォームの包括契約はそのプラットフォーム内の利用に限定される
「非営利・少部数だから申請しなくていい」 複製権は部数・営利性を問わず原則対象。少量頒布でも申請義務がある
「CD化の許諾を取ったから映像DVD化もそのままできる」 録音の許諾と録画(映像化)の許諾は区分が異なり、別途申請が必要
「ライブ会場で弾いたから配信も自動的にOK」 会場の演奏権許諾と配信のための録音・配信許諾は別物
「著作隣接権があるから原曲の許諾はいらない」 著作隣接権は演奏者自身の実演に関する権利。原曲の著作権処理とは別に必要

まとめ — 演奏楽曲を販売する前のチェックリスト

  • 演奏する楽曲がJASRAC/NexToneの管理楽曲かどうかを確認した
  • 販売形態(配信/CD・USB/映像DVD/映像配信)を決めた
  • 形態に応じた許諾窓口(配信代行サービス or JASRAC/NexTone直接)を把握した
  • CD化の許諾と映像化の許諾が別区分であることを理解した
  • ライブ会場の演奏権許諾と、録音・配信のための許諾は別物であると理解した
  • 少部数・非営利であっても使用料申請が必要という前提で動いている

著作権の実務ルールはJASRAC・NexToneの規定改定により変わることがあります。最終的な判断は各管理団体の窓口、または著作権に詳しい専門家に確認することをおすすめします。


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